○取手市みんなでいじめをなくすための条例
平成30年3月23日
条例第21号
目次
前文
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 基本理念(第3条)
第3章 責務と役割(第4条~第8条)
第4章 いじめ防止基本方針(第9条・第10条)
第5章 いじめの防止等のための施策(第11条~第17条)
第6章 市におけるいじめの防止等のための組織(第18条~第20条)
第7章 重大事態への対処(第21条~第23条)
第8章 補則(第24条~第27条)
付則
すべての子どもは,かけがえのない存在であり,その命と心が守られなければなりません。いじめは,いじめを受けた子どもの心と身体を著しく傷つけ,重大な結果さえ生じかねない危険なもので,決して許されない行為です。
取手市は,これまでの深い反省のうえに立ち,いじめをなくすことを決意しました。いじめのない社会の実現をめざすとともに,いじめは常に起こり得るものであるという現実を見つめ,いじめを早期に発見し,いじめの芽を摘むための意識改革と仕組みづくりに全力で取り組みます。
ここに,私たちは,子どもをいじめから救うために,いじめを「やめる,とめる,許さない」の誓いを立て,子どもが健やかに成長できるまちをめざして,この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は,いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ,いじめの防止等(いじめの未然防止,いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。以下同じ。)に関する基本理念を定め,市,教育委員会,市立学校,子ども,保護者,市民及び事業者の責務又は役割を明らかにするとともに,いじめの防止等のための対策を効果的かつ継続的に推進することにより,地域社会みんなの力で子どもたちが安心して生活し,健やかに成長できる環境を実現することを目的とする。
(1) いじめ 子どもと一定の人的関係にある者が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった子どもが心身の苦痛を感じているものをいう。
(2) 子ども 市立学校に在籍する児童及び生徒をいう。
(3) 市立学校 取手市立学校設置条例(昭和44年条例第15号)に規定する市立の小学校及び中学校をいう。
(4) 保護者 親権を行う者,未成年後見人その他の者で,子どもを現に監護する者をいう。
(5) 市民 市内に居住し,通勤し,又は通学する者(第3号に規定する市立学校に通学する者を除く。)をいう。
(6) 事業者 市内において事業活動を行う個人,法人又は団体をいう。
第2章 基本理念
(基本理念)
第3条 みんなでいじめをなくすためには,いじめが決して許されない行為であるとともにすべての子どもに関係する問題であるとの認識に立ち,市立学校及び保護者を中心に,いじめを行わない子どもを育てなければならない。
2 みんなでいじめをなくすためには,市,教育委員会,市立学校,子ども,保護者,市民及び事業者をはじめ地域社会を構成するすべての主体がそれぞれの責務又は役割を自覚し,連携を強化し,市全体でいじめの防止等に取り組まなければならない。
第3章 責務と役割
(市及び教育委員会の責務)
第4条 市及び教育委員会は,基本理念にのっとり,いじめの防止等のための対策を講じなければならない。
2 市及び教育委員会は,いじめの防止等のための対策を推進するため,いじめの防止等に関係する機関及び団体と連携し,子どもの健全育成に係る事業の充実に努めなければならない。
3 市及び教育委員会は,いじめの防止等のための啓発活動を行い,市民のいじめの防止等に関わる意識の高揚を図らなければならない。
4 市及び教育委員会は,市立学校に対し,第10条に規定する学校いじめ防止基本方針に基づく具体的な取組又は達成の状況を確認し,必要に応じて支援,助言又は指導を行わなければならない。
(市立学校の責務)
第5条 市立学校は,自らのいじめの防止等に係る姿勢を示すこと並びに日常の学級づくり及び学習指導等の充実が,子どもと保護者の教職員に対する信頼を生み,子どもと子どもの間のより良い関係の構築につながるとの見地に立ち,必要な措置を講じなければならない。
2 市立学校は,当該学校のいじめの防止等の対策のための組織を中心に,学校全体でいじめの防止等に関する取組を推進しなければならない。
3 市立学校は,日頃から子どもの様子を細心の注意を払って把握するように努め,いじめの事実の発見に取り組まなければならない。
4 市立学校は,いじめの事実やその疑いがあったときは,当該学校のいじめの防止等の対策のための組織を中心に,速やかに適切な措置を講じなければならない。
(保護者の責務)
第6条 保護者は,子どもの教育について第一義的責任を有する者として,子どもとのコミュニケーションを大切にするとともに,子どもに対して,いじめは許されない行為であることを十分に理解させるよう努めなければならない。
2 保護者は,子どもの様子及び行動の変化に気を配り,いじめの事実やその疑いがあったときは,速やかに,市立学校,教育委員会又は市に連絡,相談するよう努めなければならない。
(子どもの役割)
第7条 子どもは,いじめを行わないという意識を強くもたなければならない。
2 子どもは,命と心の大切さ・尊さを実感し,いじめを行わず,互いを思いやり,いたわり合いながら,いじめのない明るい生活を送るよう努めるものとする。
3 子どもは,いじめを受け,又はいじめが行われていることを知ったときは,その保護者,市立学校,教育委員会等にできるだけ早く相談するよう努めるものとする。
(市民及び事業者の役割)
第8条 市民及び事業者(以下「市民等」という。)は,地域において子どもに対する見守り,声かけ等を行い,子どもが安心して過ごすことができる環境をつくるよう努めるものとする。
2 市民等は,子どもがいじめを受けていると思われるときは,速やかに,市立学校,市その他子どものいじめの防止等のための相談機関等に情報を提供するよう努めるものとする。
第4章 いじめ防止基本方針
(市いじめ防止基本方針)
第9条 市は,法第12条の規定により,取手市いじめ防止基本方針(以下「市いじめ防止基本方針」という。)を策定するものとする。
2 市いじめ防止基本方針は,次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) いじめの防止等のための対策の基本的な方向に関する事項
(2) いじめの防止等のための対策の内容に関する事項
(3) 前2号に掲げるもののほか,いじめの防止等のための対策に関する重要事項
3 市は,子どもを取り巻く社会情勢の変化等を勘案するとともに,いじめの防止等のための対策の評価を踏まえ,必要に応じて市いじめ防止基本方針の見直しを行い,変更するものとする。
4 市は,市いじめ防止基本方針の見直しに当たっては,第18条に規定する取手市いじめ問題対策連絡協議会の意見を聴くものとする。
5 市は,市いじめ防止基本方針を策定し,又は変更したときは,速やかにこれを公表するものとする。
(学校いじめ防止基本方針)
第10条 市立学校は,法第13条の規定により,学校いじめ防止基本方針を策定するものとする。
2 学校いじめ防止基本方針は,市いじめ防止基本方針を参酌し,当該学校の実情に応じたいじめの防止等のための対策の基本的な方針及び具体的な取組を定めるものとし,必要に応じて見直しを行い,変更するものとする。
3 市立学校は,学校いじめ防止基本方針を策定し,又は変更したときは,速やかにこれを公表するとともに,保護者及び市民等の理解及び協力を得るよう努めるものとする。
第5章 いじめの防止等のための施策
(いじめの未然防止のための施策)
第11条 市及び教育委員会は,いじめを未然に防止するためには,子どもの良好な人間関係づくりが不可欠であることを踏まえ,次に掲げる事項を行わなければならない。
(1) 命と心の大切さ・尊さについて学ぶ機会を提供すること。
(2) 関係機関等と連携して,いじめに関する相談体制を整備し,当該関係機関等が行う相談事業を周知すること。
(3) 市立学校が行ういじめを未然に防止するための対策を支援すること。
(4) 市立学校,保護者,市民等,警察その他の関係者及び関係機関等と連携することにより,いじめを未然に防止するための対策を講ずること。
(5) 第18条に規定する取手市いじめ問題対策連絡協議会を定期的に開催すること。
2 市立学校は,在籍する子どもの豊かな情操及び道徳心を培い,心の通う対人交流の素地を養うことが,いじめの未然防止に資することを踏まえ,次に掲げる事項を行わなければならない。
(1) すべての教育活動を通じて道徳教育,人権教育,体験活動及び生徒指導の充実を図ること。
(2) 子どもの自主的な企画及び運営による活動を支援し,子ども及びその保護者に対するいじめの防止等に関する理解の促進その他必要な措置を講ずること。
(3) いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため,校内にいじめの防止等の対策のための組織を設置すること。
(4) 子どもの保護者及び市民等と連携して,いじめの防止等に関する活動を実施すること。
(いじめの早期発見のための施策)
第12条 市及び教育委員会は,いじめを早期に発見するため,次に掲げる事項を行わなければならない。
(1) 市立学校,保護者,市民等及び関係機関等と連携して,いじめの早期発見に努めるとともに,発見したいじめに対しては,迅速かつ適切な措置を講ずること。
(2) いじめに関する情報を収集し,相談窓口等を設置すること。
(3) 市立学校に対し,必要に応じ支援,助言又は指導をすること。
(4) 市立学校の教職員に対し,いじめに関する相談体制を整備すること。
2 市立学校は,いじめを早期に発見するため,次に掲げる事項を行わなければならない。
(1) いじめの実態を的確に把握し,在籍する子どもに対する定期的な調査その他の措置を講ずること。
(2) 市及び教育委員会,保護者,市民等及び関係機関等と連携して,いじめに関する必要な体制を整備すること。
(3) 子ども及びその保護者並びに教職員に対し,積極的にいじめに関する相談の機会を提供すること。
(いじめへの対処のための施策)
第13条 市立学校は,いじめの事実を確認したときは,直ちに次に掲げる事項を行わなければならない。
(1) いじめを受けた子ども及びいじめを知らせた子どもの安全を確保するとともに,いじめを行った子どもに適切な指導をすること。
(2) いじめに関して必要な情報を収集し,教育委員会に報告するとともに,いじめを受けた子ども及びその保護者並びにいじめを行った子ども及びその保護者に対し,それぞれの子どもが健全に成長することができるよう適切に対処すること。
(3) いじめを受けた子どもが安心して生活できるよう,必要な措置を講ずること。
2 教育委員会は,いじめの事実の報告を受けたときは,直ちに次に掲げる事項を行わなければならない。
(1) いじめに関して当該学校に必要な支援を行い,適切に指示すること。
(2) いじめを行った子どもの保護者に対し,必要に応じて当該子どもの出席停止を命ずる等の必要な措置を講ずること。
(市立学校の教職員の資質の向上)
第14条 市及び教育委員会は,いじめの防止等のための対策が,市立学校において,専門的知識に基づき適切に行われるよう研修の充実を図り,教職員の資質の向上に努めるものとする。
(いじめの防止等に係る情報提供及び啓発)
第15条 市及び教育委員会は,子どもが,互いに尊重し合い,いじめの防止等に向けて主体的に行動することができるよう,子ども及び保護者に対し,いじめに係る相談の方法その他必要な情報を提供するとともに,いじめの防止等に係る啓発を行うものとする。
(いじめ防止強化期間)
第16条 市及び教育委員会は,市全体で子どもをいじめから守り,いじめの防止等への取組を推進するため,いじめ防止強化期間を設け,市立学校,関係機関等と連携し,いじめの防止等に係る理解を深めるための広報及び啓発を行うものとする。
(財政上の措置)
第17条 市は,いじめの防止等のための施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第6章 市におけるいじめの防止等のための組織
(取手市いじめ問題対策連絡協議会)
第18条 市は,法第14条第1項の規定により,関係機関等及び団体との連携を図るため,教育委員会に取手市いじめ問題対策連絡協議会(以下「連絡協議会」という。)を設置する。
2 連絡協議会は,次に掲げる事項を行う。
(1) いじめの防止等に関する関係機関等との連携
(2) 市が実施するいじめの防止等に関する取組の推進及び啓発
(3) 市いじめ防止基本方針に基づく施策の点検及び見直しに係る意見聴取
(4) 市が実施するいじめの防止等に関する施策に対する助言
3 連絡協議会は,委員40人以内をもって組織する。
4 委員は,次に掲げる者のうちから,教育委員会が委嘱し,又は任命する。
(1) 関係団体の代表者
(2) 関係行政機関の職員
(3) 市立学校の教職員
(4) 市職員
(5) 前各号に掲げる者のほか,教育委員会が必要と認める者
5 委員の任期は,2年とする。ただし,再任を妨げない。
6 委員が欠けた場合における補欠委員の任期は,前任者の残任期間とする。
7 前各項に定めるもののほか,連絡協議会の組織及び運営に関し必要な事項は,教育委員会が規則で定める。
(取手市いじめ問題専門委員会)
第19条 教育委員会は,法第14条第3項の規定により,いじめの防止等のための対策を実効的に行うため,取手市いじめ問題専門委員会(以下「専門委員会」という。)を設置する。
2 専門委員会は,次に掲げる事項を行う。
(1) いじめの防止等に関する調査研究
(2) いじめの防止等に関する施策の企画,立案及び教育委員会への提言
(3) いじめの事案に関する調査(次号の調査を除く調査で専門委員会が調査する必要があると教育委員会が認めるものに限る。)
(4) 法第28条第1項に規定する重大事態(以下「重大事態」という。)又はいじめ以外の事由により発生した重大事態に相当する事態に係る事実関係を明確にするための調査
(5) 同種の事案の再発防止に資する対応策の検討及び提言
3 専門委員会は,委員6人以内をもって組織する。
4 委員は,次に掲げる者のうちから,教育委員会が委嘱する。
(1) 学校教育に関し優れた識見を有する者
(2) 心理,医療又は福祉に関し優れた識見を有する者
(3) 法律に関し優れた識見を有する者
(4) 前3号に掲げる者のほか,事案の調査及び検討に必要と教育委員会が認める者
5 前項の規定により教育委員会が委嘱する委員は,調査対象となる事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない者に限るものとする。
6 委員の任期は,2年とする。ただし,再任を妨げない。
7 委員が欠けた場合における補欠委員の任期は,前任者の残任期間とする。
8 第3項の規定にかかわらず,教育委員会は,個別の事項を調査審議させるため必要があるときは,専門委員会に臨時委員を置くことができる。
10 臨時委員は,その者の委嘱に係る当該個別の事項に関する調査審議が完了したときは,解嘱されるものとする。
11 前各項に定めるもののほか,専門委員会の組織及び運営に関し必要な事項は,教育委員会が規則で定める。
(取手市いじめ問題再調査委員会)
第20条 市長は,第22条の規定により調査を行うときは,取手市いじめ問題再調査委員会(以下「再調査委員会」という。)を設置する。
2 再調査委員会は,次に掲げる事項を行う。
(1) 法第28条第1項に規定する調査の結果についての再調査
(2) 前号に掲げるもののほか,市長が特に必要と認める事項に係る調査審議
3 再調査委員会は,委員6人以内をもって組織する。
4 委員は,第2項に規定する調査に必要な識見を有する者のうちから,市長が委嘱する。
5 前項の規定により市長が委嘱する委員は,調査対象となる事案の関係者及び専門委員会の委員と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない者に限るものとする。
6 委員の任期は,委嘱の日から当該諮問に係る事務が完了する日までとする。
7 第3項の規定にかかわらず,市長は,個別の事項を調査審議させるため必要があるときは,再調査委員会に臨時委員を置くことができる。
9 臨時委員は,その者の委嘱に係る当該個別の事項に関する調査審議が完了したときは,解嘱されるものとする。
10 前各項に定めるもののほか,再調査委員会の組織及び運営に関し必要な事項は,市長が規則で定める。
第7章 重大事態への対処
(重大事態への対処)
第21条 市立学校は,重大事態が発生したときは,いじめの防止等の対策のための組織による調査を行うとともに,当該重大事態が発生した旨を,教育委員会を経由して直ちに市長に報告しなければならない。
2 教育委員会は,前項に規定する報告を受けたときは,法第28条第1項の規定により,必要な場合は専門委員会に速やかに調査させるものとする。
3 教育委員会は,法第28条第1項に規定する調査の結果について報告を受けたときは,直ちにその結果を市長に報告するものとする。
(再調査の実施)
第22条 市長は,法第30条第1項の規定により受けた報告に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは,同条第2項の規定により,法第28条第1項に規定する調査の結果について,再調査委員会において調査するものとする。
2 市長は,再調査委員会における調査の結果について報告を受けたときは,直ちに教育委員会にその結果を報告するとともに,法第30条第3項の規定により,その結果を議会に報告するものとする。
第8章 補則
(個人情報の取扱い)
第24条 市は,個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の規定により,この条例の施行に当たって知り得た個人情報を保護し,及び適正に取り扱わなければならない。
2 いじめに関する通報,相談等に関係した者は,正当な理由なく,その知り得た個人情報を他人に漏らしてはならない。
(市立学校以外の学校への協力要請)
第25条 市は,市立学校を除く学校の設置者又は管理者に対し,いじめの防止等について必要な協力を求めるものとする。
2 専門委員会及び再調査委員会は,市立学校を除く学校の設置者又は管理者に対し,専門委員会及び再調査委員会が行う調査について必要な協力を求めるものとする。
(市長及び教育委員会の連携)
第26条 市長及び教育委員会は,いじめの防止等のための対策を連携して推進するため,いじめに関する情報を共有し,積極的に連絡調整を行うものとする。
(委任)
第27条 この条例に定めるもののほか,この条例の施行に関し必要な事項は,市長又は教育委員会が別に定める。
付則
この条例は,平成30年4月1日から施行する。
付則(令和元年条例第1号)
この条例は,公布の日から施行する。
付則(令和5年条例第2号)
この条例は,令和5年4月1日から施行する。